20250927 現代語訳を終えて
第一弾が「大学章句」であった。
短くて、取りつきやすい。
だいたい1ヶ月半で全文の現代語訳を終えた。
次は「論語」である。別のブログを使う。
論語は来年3月末までに訳し、次年度は「孟子」と「中庸」を訳す。
つまり2年間で四書を訳し終える。
次の3年間で五経を訳す。5年計画である。
大学章句は、元々書経の一部であった「大学」を朱子が編纂したものである。
伊藤仁斎、熊沢蕃山などは朱子による編集を嫌い、オリジナルで読み解いている。
私もオリジナルを一瞥したが、まあ大きな違いはない。だから大学章句でよしとした。
エッセンスは三綱領と八条目である。これがオリジナルにもあるのだ。
三綱領は、読んだままであり、この通りだとしよう。
私が興味を掻き立てられるのは八条目、特に格物致知である。
この部分は極めて重要で、宇宙秩序と人倫を結びつける要の位置付けにある。
人は倫理で悩む。いつの時代でも、悪は栄えなかったといえるだろうか。
だから、天意に沿った生き方をすれば国が繁栄するなどと言われても、よほどのお人好しでない限り、まともには聞かない。
でも儒学はそういうのである。真っ当に生きよ。仁を大切にせよ。そうでなければ必ずや滅びん。見よ諸国の盛衰を。賢帝あれば栄え、悪帝により衰退しているではないか、と。
確かにそうかもしれない。そうであれば、そこにはメカニズムがあるはずである。
理屈にうるさい現代人の一人である私は、天意とは何か。ただ強いもの、遠慮しない者が栄えるというだけではないのか。徳を持つものこそ繁栄する道理が知りたい。そう思うのである。
大学における解答が、それこそ格物致知なのだ。
意味は推し量るしかないが、格物とは観察しきること。致知とは真理を得ることだろうから、予断なく偏見なく真っ直ぐに事象を見なさい、それによって真理が見えてくるぞと言っているのだと思う。
格物致知の段階をクリアすると、意が誠になる。そして心が正になる、家族が和合する、世の中が収まる、と続く。正しく観察することが全ての出発点だというのが「大学」である。
一方で、それは地上世界の小さな話でもある。
私が知りたいのは、造物主の意向に適った生き方とはどのようなものか、それを知ることはできるのか、その通りに生きるとはどのようにすることなのか、などである。
そこに至る道もまた格物致知から始まるのではないか、という仮説はありうると思う。
世の中や、宇宙に起きる事象をよーく観察するのだ。
そこに天意を見出す瞬間が必ずやあるだろう、と私は予感する。
いや、世の中で起きていることは全て天意なのだから、私の観察不足で知(真理)に至ってないだけに違いない。
よく観察して真理を掴め。それに向き合って誠実に生きよ。結果して己の生き方は正しくなり、家は和合し、国は治まり、世界は平和で繁栄する。
これが八条目である。素晴らしいではないか。その出発点が「よく観察して真理を掴め」なのである。世に巣食う邪悪をきっちり見抜いて正しい行動をとらないといけないし、そのような国民が一定数に達したら確かに世の不正は衰退していくだろう。他人を思いやり、他人から慕われ、他人と共に生きることができる人たちが、中心になった世界への転換も夢物語ではないかもしれないのだ。孔子は、そして孟子や朱子や王陽明や熊沢蕃山は、そんな理想に生きたのだろう。
以上が、大学章句を現代語訳した直後の私の感想である。
続きの「論語」はコチラ:
20250927 伝の第十章 第十九節〜第二十三節・結語
生財有大道 生之者衆食之者寡爲之者疾用之者舒則財恒足矣
仁者以財發身不仁者以身發財
未有上好仁而下不好義者也 未有好義其事不終者也 未有府庫財非其財者也
孟獻子曰畜馬乘不察於雞豚 伐冰之家不畜牛羊 百乘之家不畜聚斂之臣 與其有聚斂之臣寧有盜臣 此謂國不以利爲利以義爲利也
長國家而務財用者必自小人矣 彼爲善之小人之使爲國家菑害並至 雖有善者亦無如之何矣此謂國不以利爲利以義爲利也
右傳之十章 釋治國平天下
凡傳十章前四章統論綱領指趣後六章細論條目功夫 其第五章乃明善之要第六章乃誠身之本在初學尤爲當務之急 讀者不可以其近而忽之也
財を生じるに大道あり。これを生ずる者衆(おお)くして、これを食(は)む者は寡(すくな)く、これを為(つく)る者疾(はや)くして、これを用(もちい)る者舒(ゆるやか)なれば、則ち財常恒に足る。(第十九節)
仁者は財を以て身を発し、不仁者は身を以て財を発す。(第二十節)
未だ上(かみ)仁を好みて、而も下(しも)義を好まざる者有らざるなり。未だ義を好みて、その事終へざる者有らざるなり。未だ府庫(ふこ)の財、その財に非ざる者有らざるなり。(第二十一節)
孟献子曰く、馬乗(馬上)を畜(やしな)ふものは、雞豚(けいとん)を察せず。冰(ひょう)を伐(き)るの家は、牛羊を畜(やしな)はず。百乗の家は、聚斂(しゅうれん)の臣を畜はず。その聚斂の臣有らん与(よ)りは、寧(むし)ろ盗臣有れ、と。此れ国は利を以て利と為さずして、義を以て利と為すを謂ふなり。(第二十二節)
国家に長として財用を務むる者は、必ず小人に自(よ)る。小人をして之れ国家を為(おさ)め使(し)むれば、菑害(しがい)並び至る。善者有りと雖も、亦これを如何ともする無し。此れ国は利を以て利と為さずして、義を以て利と為すを謂ふなり。(第二十三節)
右、伝の十章。国を治め天下を平らかにするを釈す。
凡て伝十章。前の四章は綱領の指趣を統論し、後の六章は条目の工夫を細論す。その第五章は乃ち善を明らかにするの要、第六章は乃ち身を誠にするの本、初学に在って尤も当に務むべきの急と為す。読む者その近きを以てして之を忽(ゆるがせ)にすべからざるなり。
舒:のべる、のばす、のびる、広げる。ゆるやか、ゆったり
身:肉体、体。社会的地位や境遇を中心とした自分(一身、単身、保身)
発:矢を放つ。出す、おこる。明らかになる。盛んになる。始める。出かける。
府庫:文書や財貨を収めておく蔵。国府など地方官庁の庫
孟獻子:魯国の賢大夫、仲孫蔑(ちゅうそんべつ)の異名。
察:詳しく知る、推しはかる、思いやる
伐:きる、罪ある者を武器で攻める、敵を攻める、うつ
冰:こおる、こおり。氷のように純白で汚れのないもの。溶けやすいもの
聚斂:集め納める。特に支配階級が人民から重税を厳しく取り立てること
菑害:自然災害・人為的災害又は物事を損なう害を及ぼすこと
並至:二つ以上の事柄が同時に進むこと
功夫:努力、功績、訓練、修行、技能
尤:非常に優れていること
忽:非常に急、心が急く、にわか、たちまち。うっかりする、おろそかにする。
財を成す真っ当な方法があります。財を生み出す者たちを増やし、財を食い潰す者たちを減らすこと、財をなるべく早く作り出して、できるだけゆっくりと使うこと。これができたならば、いつでも財は十分にあることになります。(第十九節)
道徳的に優れた人は財を適切に用いることで社会的地位を得ていきますが、そうでない人は社会的地位を使って私腹を肥やします。(第二十節)
上に立つ者が仁を大切にするなら、下の者は必ず義を大切にします。義を重視する部下は、必ず務めを果たします。そうなれば公的な財産が私物化されることなど決してありません。(第二十一節)
魯国の賢大夫である孟献子曰く、軍馬を飼うような高位の者は豚や鶏のことなど気にすることがありません。氷を切り出す儀式を行うような高位の者は牛や羊など飼ったりしません。戦車百乗を率いる高位の者は、民から税を厳しく取り立てる小役人など養いません。むしろ、自分の財産を盗み取るような家臣の方がまだマシだと考えています。このように、国というものは、利益こそが財産だというのではなくて、義侠心こそが財産だということなのです。(第二十二節)
しかしながら国家経営を司る者は、どうしても小役人を雇ってしまいます。小役人が国家を運営すると、国家には災禍が次々と起こるものです。こうなると、善人がいたとしてもどうすることもできません。だから、国を治めるには利益で誘導するのではなく、義侠心をベースにしなければなりません。(第二十三節)
以上が伝の第十節であり国を治め天下を平らかにする道筋を表しています。前の四章は三綱領の趣旨の解題、後の六章は八条目の内容の詳細な説明です。その第五章は善を明らかにする要諦、第六章は身を誠にすることの根本を記していて、初学者が何よりもまず真剣に取り組むべき部分です。これを読む人は、これら二章に書いてあることが自分の手近でできることだからといって、ゆめゆめおろそかにすることがないようにしてください。
【AI訳】
There is a proper way to accumulate wealth. Increase those who create wealth and reduce those who squander it; produce wealth as quickly as possible and use it as slowly as possible. If this is achieved, wealth will always be sufficient. (Section 19)
The morally upright gain social standing by using wealth appropriately, while the unprincipled use their social standing to enrich themselves. (Section 20)
If those in high positions value benevolence, those below will surely value righteousness. Subordinates who value righteousness will surely fulfill their duties. Thus, public property will never be privatized. (Section 21)
Meng Xianzi, a wise minister of Lu, said: Those of high rank who tend warhorses do not concern themselves with pigs or chickens. Those of high rank who perform the ice-cutting ceremony do not keep cattle or sheep. A high official commanding a hundred chariots does not employ petty officials who harshly collect taxes from the people. He would rather have retainers who steal his property. Thus, a state's true wealth lies not in profit, but in righteousness. (Section 22)
Nevertheless, those who govern the state inevitably hire petty officials. When petty officials run the state, calamities befall it one after another. Once this happens, even if virtuous people exist, they can do nothing. Therefore, to govern a state, one must not rely on profit as an incentive, but must base governance on chivalrous spirit. (Section 23)
The above constitutes Section 10 of the Classic, outlining the path to govern a state and bring peace to the realm. The preceding four chapters elucidate the principles of the Three Cardinal Principles, while the subsequent six chapters provide detailed explanations of the Eight Articles. Chapter Five records the essential principles for discerning virtue, and Chapter Six records the fundamental principles for cultivating sincerity. These are the sections that beginners should engage with most earnestly. Readers should not, under any circumstances, neglect these two chapters simply because the matters they discuss seem within their immediate reach.
20250924 伝の第十章 第十五節〜第十八節
唯仁人放流之迸諸四夷不與同中國 此謂唯仁人爲能愛人能惡人
好人之所惡惡人之所好是謂拂人之性菑必逮夫身
是故君子有大道 必忠信以得之驕泰以失之
唯だ仁人のみはこれを放流し、諸(これ)を四夷に迸(しりぞ)け、与(とも)に中国を同じうせず。此を、唯だ仁人のみ能く人を愛し能く人を悪(にく)むと為すと謂ふなり。(第十五節)
賢を見て、而も挙ぐる能わず、挙げて而も先んずる能はざるは命なり。不善を見て、而も退くる能はず、退けて而も遠ざくる能はざるは、過(あやまち)なり。(第十六節)
人の悪む所を好み、人の好む所を悪む、是を人の性に払(もと)ると謂ふ、菑(わざわい)必ず夫(そ)の身に逮(およ)ぶ。(第十七節)
是の故に君子には大道有り。必ず忠信以て此を得、驕泰(きょうたい)以てこれを失ふ。(第十八節)
仁人:思いやりの心を持った人
放流:追放すること
迸:ほとばしる、勢いよく飛び散る。はしる、逃げる
四夷:四方の服従しない民
舉:あげる、持ち上げる、上にあげる。事を起こす。とりたてて用いる
拂:はらう、払い除ける。逆らう、背く。助ける、補佐する
菑:荒れた田畑、立ったまま枯れた木。わざわい
逮:及ぶ、届く。追いかける、捉える。
夫:(一人前の)男、夫。労働に携わる人。それ、かれ、かな。
驕泰:驕り高ぶること、また、その様
ただ仁徳の備わった人のみが、このように妬んだり恨んだりする人たちを追い出して野蛮な国々に送り出してしまい、中原の文明国家に共存させようとはしません。すなわち、ただ仁徳のある人だけが人を正しく愛し、正しく憎むということなのです。
賢人を見出しても登用せず、登用したとしても先頭に立てることはしないなら、それは明らかな失敗です。不善をなす人を見出しても職を解かず、職を解いても遠くに飛ばすとかしないのならば、その判断は誤りです。
人が悪むものを好み、人が好むものを憎むとなれば、これはもう性根が間違っているとしか言いようがありません。必ずや災が身に及ぶことでしょう。
つまり、リーダーには外してはいけない道があるのです。それは、部下がリーダーを信じてくれれば成立しますが、リーダーが驕り高ぶったならば失われてしまうものです。
【AI訳】
Only a benevolent ruler would expel such envious and resentful people, banishing them to barbarous lands, refusing to allow them to coexist within the civilized states of the Central Plains. Thus, only a benevolent ruler truly loves and hates with righteousness.
If you find a wise person but do not appoint them, or if you appoint them but do not place them in a leading position, that is a clear failure. If you find someone who does wrong but do not remove them from office, or if you remove them but do not send them far away, that judgment is mistaken.
To favor what others despise and to hate what others cherish—this can only be described as a fundamentally flawed nature. Disaster will surely befall them.
In short, there is a path a leader must never stray from. It is established when subordinates trust their leader, but lost when the leader becomes arrogant and haughty.
20250924 伝の第十章 第八節〜第十四節
外本內末爭民施奪
是故財聚則民散 是故言悖而出者亦悖而入
貨悖而入者亦悖而出 財散則民聚
康誥曰惟命不于常 道善則得之不善則失之矣
楚書曰楚國無以爲寶惟善以爲寶
舅犯曰亡人無以爲寶仁親以爲寶
秦誓曰若有一个臣 斷斷兮無他技其心休休焉其如有容焉 人之有技若己有之人之彥聖其心好之 不啻若自其口出寔能容之以能保我子孫・黎民 尚亦有利哉 人之有技媢疾以惡之人之彥聖而違之俾不通 寔不能容以不能保我子孫・黎民 亦曰殆哉
本を外にして末を内にすれば、民は争はしめ奪ふを施すなり。(第八節)
是の故に財聚(あつま)れば則ち民散じ、財散ずれば則ち民聚る。(第九節)
是の故に言悖(もと)つて出づる者は、亦(また)悖つて入る。貨悖つて入る者は、亦悖つて出づ。(第十節)
康誥(こうこう)に曰く、惟れ命(めい)常に于(おい)てせず、と。善なれば則ちこれを得、不善なれば則ちこれを失ふを道ふ。(第十一節)
楚書に曰く、楚国には以て宝と為す無し、惟(た)だ善以て宝と為す、と。(第十二節)
舅犯(きゅうはん)曰く、亡人(ぼうじん)は以て宝と為すなし。親(しん)を仁する、以て宝と為す、と。(第十三節)
秦誓(しんせい)に曰く、若し一个(いっか)の臣有らんに、断断(だんだん)兮(けい)として他の技(ぎ)無く、その心休休(きゅうきゅう)焉(えん)として、それ容(い)るる有るが如し。人の技有るは、己(おのれ)これ有るが若(ごと)く、人の彦聖(げんせい)なるは、その心これを好(よ)みし、啻(ただ)にその口より出づるが若くなるのみならず、寔(まこと)に能(よ)くこれを容る。以て能く我が子孫黎民(れいみん)を保んぜん、尚(こいねがわく)は亦利有らしめん哉(かな)。人の技有る、媢疾(ぼうしつ)して以てこれを悪(にく)み、人の彦聖なる、而もこれに違ひて通ぜざら俾(し)め、寔に容るること能わず。以て我が子孫黎民を保んずる能はざらん、亦ここに殆(あやう)い哉。(第十四節)
悖:もとる、道理に外れる、背く。乱れる。盛ん。
于:ここに。伍長を整える語。…に。…において。…より。ああ(感嘆)
楚書:楚の国の時代の書。詳細不明。諸説あり。
舅犯:中国春秋時代の晋の政治家。狐偃(こえん)とも。文公を助く
亡人:亡命者、死者
秦誓:書経、周書の最後の篇。
一个:一つの、一人の
断断:一つの物事に熱心に打ち込むこと。態度がきっぱりしていること。絶対に。
兮:語末に添えて語勢を示す。詠嘆・疑問・強意・決定・命令の意を含むことあり
休休:時々休みながらことを続ける様子。よく考えながらことを行う様子。
焉:いずくんぞ、なんぞ。これ、ここに
彦聖:国のすぐれた人
啻:ただ、わずかに。否定の「不」などの後につけて「単にそればかりではない」
寔:放置する、置いておく。これ、ここ
黎民:庶民、人民、大衆
保:持ち続ける。請け合う。安らか、やすんずる、守る、世話をする。
尚:その上に、重んずる、高くする、久しい。相変わらず、ちょうど
媢疾:ねたみ憎むこと。
俾:…するようにさせる。
殆:困り果てた、うんざりした。ほとんど。すんでのことで、危うく。
政治の根本を放置してどうでも良いことばかりやっていては、民は争い始め、奪い合いを始めるでしょう。(第八節)
このため君主が財貨を集めるようなら民は離散し、逆に君主が財貨を放出すれば民が集まってくるのです。(第九節)
またこのため道理に外れた言葉を発すれば相手からも道理に外れた言葉が返ってくるし、インチキして集めた財貨はインチキされて出て行ってしまうものです。(第十節)
書経の一篇「康誥」に曰く、天命は常に一定というわけではなくて、善行すれば得られるし、悪行すれば失われてしまうものです。(第十一節)
楚の時代の書物には、楚の国の繁栄は財貨ではなく、善行を積む人々がもたらしたものだと書いてあります。(第十二節)
文公を担いで不遇時代に諸国放浪し後に政権に返り咲いた晋国の政治家舅犯は、亡命者の自分には何の財もないが、心を寄せてくれる仲間こそが宝だったと言っています。(第十三節)
書経の周書は最後のところで、もし部下の一人が本人も認めるくらい取り柄がなくても、心が広くていろんな意見やいろんな人を偏見なく受け入れているならそれでいいじゃないかと書いています。他人の能力が優れていれば自分のことのように喜び、立派な人物がいれば心から賞賛するのです。ただ口先でそういうのではなく、心からそう思って、本当によく受け入れるのです。このようにすれば、国の子孫や民を守ることができるでしょう。きっと、大きな財産をもたらしてもくれるはずです。逆に、他人の能力が優れていたらこれを妬み、立派な人物がいれば貶めようとする、そんな事をしていたら国の子孫や民を守ることなどできません。それは本当に危険なことです。(第十四節)
【AI訳】
If the ruler neglects the fundamentals of governance and focuses only on trivial matters, the people will begin to quarrel and fight over resources. (Section 8)
Therefore, if the ruler hoards wealth, the people will scatter; conversely, if the ruler distributes wealth, the people will gather. (Section 9)
Moreover, if one speaks words contrary to reason, one will receive words contrary to reason in return; wealth gathered by deceit will be lost through deceit. (Section 10)
The Book of Documents, chapter “Kang Gao,” states: Heaven's mandate is not fixed; it is gained through good deeds and lost through evil deeds. (Section 11)
A text from the Chu period states that Chu's prosperity came not from wealth, but from people who accumulated good deeds. (Section 12)
Jiu Fan, a Jin statesman who supported Duke Wen during their exile and later regained power, said that as an exile he possessed no wealth, but the comrades who shared his convictions were his true treasure. (Section 13)
The Book of Zhou in the Shujing concludes by saying: Even if one subordinate lacks any discernible merit, if the ruler is broad-minded and accepts diverse opinions and people without prejudice, that is sufficient. He rejoices as if it were his own when others excel, and sincerely praises those of outstanding character. This is not mere lip service, but genuine acceptance from the heart. By acting thus, one can protect the state's descendants and people. Surely, this will also bring great wealth. Conversely, if one envies others' abilities and seeks to disparage noble individuals, such conduct cannot protect the nation's descendants or its people. That is truly dangerous. (Section 14)
20250922 伝の第十章 第二節〜第七節
所惡於上毋以使下 所惡於下毋以事上 所惡於前毋以先後 所惡於後毋以從前 所惡於右毋以交於左 所惡於左毋以交於右 此之謂絜矩之道
詩云樂只君子民之父母 民之所好好之民之所惡惡之 此之謂民之父母
詩云節彼南山維石巖巖赫赫師尹民具爾瞻 有國者不可以不愼 辟則爲天下僇矣
詩云殷之未喪師克配上帝 儀監于殷峻命不易 道得衆則得國失衆則失國
是故君子先愼乎德 有德此有人 有人此有土 有土此有財 有財此有用
德者本也財者末也
上に悪(にく)む所、以て下を使ふこと毋(なか)れ。下に悪む所、以て上に事(つか)ふること毋れ。前に悪む所、以て後(うしろ)に先(さきだ)つこと毋れ。後に悪む所、以て前に従ふこと毋れ。右に悪む所、以て左に交はること毋れ。左に悪む所、以て右に交はること毋れ。此れをこれ絜矩(けっく)の道と謂ふ。(第二節)
詩に云ふ、楽只(らくし)の君子は、民の父母なり、と。民の好む所はこれを好み、民の悪む所はこれを悪む。此れをこれ民の父母と謂ふ。(第三節)
詩に云ふ、節たる彼の南山(なんざん)、維(こ)れ石巌巌(がんがん)たり。赫赫(かくかく)たる師尹(いん)、民具(とも)に爾(なんじ)を瞻(み)る、と。国を有(たも)つ者は以て慎まざるべからず。辟(へき)すれば則(すなわ)ち天下の僇(りく)と為る。(第四節)
詩に云ふ、殷(いん)の未だ師を喪(うしな)はざるや、克(よ)く上帝に配す。儀(よろし)く殷に監(かんがみ)るべし。峻命(しゅんめい)易(やす)からず、と。衆を得(う)れば則ち国を得、衆を失へば則ち国を失ふを道(い)へるなり。(第五節)
是の故に君子は、先づ徳を慎む。徳有れば此に人有り、人有れば此に土有り、土有れば此に財有り。財あれば此に用あり。(第六節)
徳は本なり。財は末なり。(第七節)
惡:わるい、あく。にくむ。「悪」の旧字体
毋:なかれ、してはいけない。禁止を表す助字。ない。否定を表す助字
樂只:たのしい、よろこばしい。「樂只君子」は「楽しくてたまらない優れた人」
節:ふし。区切り。みさお、志を堅く守ること、礼節。ほどよい。気候の変わり目
巖:いわ、いわお、大きな石。けわしい、がけ
赫:あかい、明るい。輝く、盛んな。怒る。熱い、炙る
尹:おさめる、正す。おさ、長官。いん(律令制の弾正台長官)
辟:避ける、尻込みする。罪。君、天子。めす、招く。邪。土地を開く
僇:ころす、はずかしめる、恥をかかせる
上の人にされた嫌なことは下の人にしないことです。下の人にされた嫌なことは上の人にしないことです。前の人にされた嫌なことは後ろの人にしないことです。後ろの人にされた嫌なことは前の人にしないことです。右の人にされた嫌なことは左の人にしないことです。左の人にされた嫌なことは右の人にしないことです。これが絜矩の道すなわち「自分ならどう感じるかをものさしにして他人の心を思いやる」ということです。(第二節)
詩経は、伸び伸びと楽しむ君主は民衆の父母であると言っています。民衆が良しとするものを良しとして、民衆がダメだと思うものはダメだと思うのです。これが、民衆の父母であるということです。(第三節)
あの聳え立つ南山には大きな岩がたくさんあります。今をときめく大師の尹氏の行いは、民衆すべてに凝視されているのです。したがって国家を預かる尹氏は、よく慎まなければならないと詩経は言います。このことを忘れたら、天誅が下るのです。(第四節)
詩経には、殷がこのような指導原理を保持していた時には、非常に充実した国であったとあります。殷を模範にしなさい。運命はとても厳しいものです。民衆の支持があってこその国家であり、民衆の支持を失えば国は滅びるのです。(第五節)
だから君主は何よりもまず徳を慎むのです。徳があれば人がついてきます。人がついてくれば土地がついてきます。土地がついてくれば財が生まれます。財があれば、これを用いることができるではないですか。(第六節)
徳が根源であり、財は結果なのです。(第七節)
【AI訳】
Do not inflict upon those below you what you dislike being done to you by those above. Do not inflict upon those above you what you dislike being done to you by those below. Do not inflict upon those behind you what you dislike being done to you by those before. Do not inflict upon those before you what you dislike being done to you by those behind. Do not inflict upon those to your right what you dislike being done to you by those to your left. Do not inflict upon those to your left what you dislike being done to you by those to your right. This is the way of the square rule—that is, “using how you yourself would feel as the measure to consider the hearts of others.” (Section 2)
The Book of Songs says that a ruler who enjoys life freely is the parent of the people. What the people deem good, he deems good; what the people deem bad, he deems bad. This is what it means to be the parent of the people. (Section 3)
That towering Southern Mountain holds many great rocks. The actions of the great minister Yin, who holds sway today, are scrutinized by all the people. Therefore, the Book of Songs says that Minister Yin, who holds the state in trust, must be exceedingly cautious. Forget this, and Heaven's punishment will fall. (Section 4)
The Book of Songs states that when the Yin dynasty upheld such guiding principles, it was a highly prosperous state. Take the Yin as your model. Fate is exceedingly severe. A nation exists only with the support of the people; without it, the nation perishes. (Section 5)
Therefore, above all else, a ruler must cultivate virtue. With virtue, people will follow. With people following, the land will follow. With the land following, wealth will be generated. If we have wealth, we can make use of it, can't we?(Section 6)
Virtue is the root; wealth is the result. (Section 7)
20250920 伝の第十章 第一節
所謂平天下在治其國者上老老而民興孝上長長而民興弟上恤孤而民不倍 是以君子有絜矩之道也
謂はゆる天下を平(たい)らかにするにはその国を治るに在りとは、上、老を老として、民、孝に興り、上、長を長として、民、弟に興り、上、孤(こ)を恤(あわれ)んで、民、倍(そむ)かず。是を以て君子は絜矩(けっく)の道あるなり。
孝:子が親を大切にし、よく仕えること
弟:おとうと。弟子、門人。
孤:みなしご。ひとり。そむく
恤:うれえる、あわれむ、めぐむ
絜矩:絜は「測る」矩は「規矩(定規、掟)」。自分の心を物差しにして他人の心を推しはかり人としてあるべき「掟」や基準(規矩)に従って行動すること
「天下を平和にするにはまずその国をよく治める」とは、君主が老人を老人らしく扱えば民は子が親を大切にする気持ちが興り、君主が年長者を年長者として扱えば民も年長者を敬う心が興り、君主が孤児を憐れんで救えば民も同じようにするということです。このように、君子は自分の心にある物差しで相手の気持ちを推し量って行動するのです。
【AI訳】
"To bring peace to the world, one must first govern their state well." This means that if a ruler treats the elderly with respect, the people will be inspired to cherish their parents; if a ruler honors the senior as befits their age, the people will be moved to respect their elders; and if a ruler shows compassion and aid to orphans, the people will follow suit. Thus, a gentleman acts by measuring others' feelings with the yardstick of their own heart.
最後の第十章。引き続き、難しいことは何も言っていない。大学は、本当に平易である。
20250919 伝の第九章 第六節〜第九節
詩云桃之夭夭其葉蓁蓁 之子于歸宜其家人 宜其家人而后可以敎國人
詩云宜兄宜弟 宜兄宜弟 而后可以敎國人
詩云其儀不忒正是四國 其爲父子兄弟足法 而后民法之也
此謂治國在齊其家
右傳之九章 釋齊家治國
詩に云ふ、桃の夭夭(ようよう)たる、その葉蓁蓁(しんしん)たり。この子于(ここ)に婦(とつ)ぐ、その家人に宜(よろ)し、と。その家人に宜しくして、而る后(のち)以て国人を教ふべし。(第六節)
詩に云ふ、兄に宜しく弟に宜し、と。兄に宜しく弟に宜しくして、而る后以て国人を教ふべし。(第七節)
詩に云ふ、その儀(のり)忒(たが)はず、是の四国を正す、と。その父子兄弟為る、法(のっと)るに足りて、而して后に民これに法るなり。(第八節)
これ国を治むるにはその家を斉(ととの)ふるに在るを謂ふ。(第九節)
右、伝の九章、家を斉へ国を治むるを釈す。
夭:わかい、わかわかしい、わかく美しい。若死に。災い
蓁:草木が盛んにしげるさま。しげみ、草むら。多く集まるさま
于:ここに。…に。…において。
歸:かえる、かえす。とつぐ、おく
宜:よろしい、よい、都合が良い。むべ、うべ、当然である。よろしく…べし
儀:作法、礼法、手本。よい、正しい。こと、ことがら
忒:ことなる、間違い、非常に
詩経がいうように、若々しくて元気いっぱいの女性がお嫁に行くことは、嫁ぎ先の家にとって良いことです。その家が良くなって、やがて国全体がそれに導かれます。(第六節)
これも詩経ですが、兄と良い関係を築き弟とも良い関係を築くことです。そうすればやがて国全体を指導することができます。(第七節)
さらに詩経ですが、君主が良いお手本を示せば隣国まで正されます。君主の親子がみなお手本になれば、民もみなそうするでしょう。(第八節)
これこそ、国を治めるにはまず家を斉えさいということなのです。(第九節)
以上が伝の九章で、家を斉えて国を治めることについて述べています。
【AI訳】
The Book of Songs says: A vibrant and youthful woman, when she marries, brings blessings to her new family. As that family prospers, it guides the entire nation. The Book of Songs also says: Build a good relationship with your older and younger brothers. By doing so, you can lead the entire nation. Furthermore, the Book of Songs says: If a ruler sets a fine example, even neighboring states will be set right. If the ruler and their family serve as models, the people will follow suit. This means that to govern a nation, one must first bring order to their own household. The above is from the ninth chapter of the Commentary, which discusses ordering the household to govern the nation.