20241114 トランプ批判の視点

米大統領に返り咲きが決まったドナルド・J・トランプ氏への日本メディアの視線は冷たい。曰く、彼はイエスマンばかり周囲に集めるだろう。彼は米国をさらに分断させるだろう。分断を煽って権力を保つあざといやり方だ。民主主義への脅威だ。気候変動対策など世界が一丸となって取り組まなければならない課題を軽視し、パリ協定離脱など世界の調和を乱すだろう。彼は自身の利益のことしか考えていない。彼が当選したのは白人下流階層の頭の悪い連中が投票したからで、知識階層は皆ハリス支持だったが数で負けた。バイデンの急な撤退で駆り出されたハリス氏は準備が足りなかった。素晴らしい人物なのにそれを国民に伝えるだけの時間がなかった。等々。

 

読者はこれらの記事や報道を鵜呑みにするだろうか。

 

トランプの掲げる政策は多岐にわたるが、経済に関して言えばグローバリズムは米国民の雇用と所得を減らすので無制限に進めることは適切ではない。関税をかけて海外からの商品流入(輸入)を抑制し、国内産業を立ち直らせ、米国民の雇用と所得を維持向上させるべきだ、という主張には何らのおかしい点もなかろう。

 

一世を風靡してきたグローバリズムの経営論は、賃金コストの低い地域で生産し、所得が多い地域で販売する。それを地球規模で行うのだ、というものだ。いや、賃金だけではなくて、例えば環境保護規制の緩い国で生産する(その方が総コストは抑えられる)ということまで含めての世界生産体制こそ、グローバル企業が追求してきたものではなかったか。貿易や資本の自由化はそのために是とされ、TPPなど自由貿易協定は良きものとして扱われてきたが、これは明らかに資本と経営の目線からの話だった。日本のメディアあるいは学会は、その潮流を否定すること、批判的に論じることが一切なく、グローバリズム万歳で反対派は遅れているとひなhしてきたのだから、その立場からトランプ氏の経済政策ビジョンを批判することは大いに理解できる。でもそれはポジショントークだろう。

 

グローバリズム経営論の致命的な欠陥は、それは世界に地域格差があるという前提でしか機能しない点にある。かつて中国で生産していたが中国の労賃が上がってきたらベトナムとかミャンマーに工場を移さないといけない。そうやって生産場所は点々を労賃の安い国へと移動し続ける。いずれ行き先は無くなるだろう。また買ってくれるはずの市場である米国民はすでに借金で首が回らなくなってきた。大多数の労働者の所得は上がっておらず、貧困層も増大していることから、これから大量に商品サービスを買い続けられるかわからなくなってきた。つまりグローバリズム推進の結果、世界が平準化して来ればグローバリズムは行き詰まるのだ。しかも多くの国で、生産も消費もくたびれ果てた形でである。

 

グローバリズムの背後に高収益を狙う経営者と、高配当を求める投資家がいることは明白で、そういう意味ではトランプ経済は目線を投資家や経営者から労働者に移しての運営を目指しているといえるかもしれない。

 

だからグローバル経済の立場からトランプは脅威だと論じるのは繰り返すがポジショントークに過ぎないと理解すべきだ。

 

トランプを批判するとすれば、全く別の視点からでなければならないように私には感じられる。彼は存在の根本的な部分で不透明なところがある。彼を押し立てている勢力は一体誰なのか。彼の豪奢な生活(マイアミの邸宅を見よ)は何によって支えられているのか。実は今行われているのは一部の米軍によるクーデターであるとの説もある。真偽は不明。しかし軍が関与しているとするなら、いろいろな面で説明がつくのも事実だ。お前は何者なんだ、誰と一緒になって動いているんだ、そこを明らかにしろ、というのが現時点においてトランプを批判するとすれば、最も重要な点であると私は思う。